婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 私の肩を優しく抱いて体勢を直してくれた後、新さんはすっと立ち上がり「幸真、静かだな」と、様子が気になったようでベビーベッドへ足を向ける。

 いつもこう。私ばかりドキドキして動揺してばかり。本当に私からキスなんてできるのかな。

 一抹の不安を抱えて悶々としていると、新さんがこちらに戻りながら「寝たみたいだ」と幸真の様子を教えてくれた。

「そうですか。さっきいっぱい泣いていたから疲れちゃったんですかね」

「まだ早いけど茉莉子も寝たら? ずっと睡眠不足だろう」

 ありがたい提案だけれど、さっきあんなキスをされてしまって気分が高揚しているので、こん
な状態で寝られるとは思えない。

 それに変なスイッチが入ってしまったらしく、新さんに触れたい衝動に駆られている。

 かといっていまだに自分から触れることなどできないのだけれど。
< 159 / 166 >

この作品をシェア

pagetop