婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「だって、初めて会った時に私には色気がないとか、地味だとか、まるで子供みたいだって、散々悪く言っていたじゃないですか」

「いつの話をしている。十八だった茉莉子と、もうすぐ二十三になる今の茉莉子とでは全然違うだろう」

「たいして変わっていないですよ」

「いや、女らしくなった。キスしたいと思うくらいには」

 新さんはフォークを皿に置き、親指の腹で濡れた唇をゆっくりと拭う。

 その色っぽい仕草を目のあたりにして全身の血が沸き立つようにかあっと熱くなった。

「してみるか?」

「え?」

「キス」

「しませんよ!」

 顔はもう真っ赤になっているはず。恥ずかしくていたたまれない。

「とにかく、そういうわけだから」

「ちょっと待ってください。急に意見を変えられても困ります。私は結婚したくないです」

 強く否定をする。新さんは面倒くさそうにテーブルに頬杖をついて溜め息を漏らした。

「往生際が悪いな」

「そんなふうに言われる筋合いはありません」

 ムッとして眉を寄せる。
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