婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 ドギマギしながら、ガウンのボタンを上まできっちりと留めてリビングへと足を向ける。

「お先にいただきました」

 声をかけると、ソファでタブレットを眺めていた新さんが振り向いて目を見開いた。

「なんだその恰好は」

「え? どこかおかしいですか?」

「どうしてそんな着方をしているんだ。ダサすぎる」

 眉間に皺を寄せながら詰め寄ってきて私の胸元に手を掛けた。

「ちょ、ちょっと!」

「いいから」

 頭のてっぺんに降ってきたぶっきらぼうな声に委縮して、顔を俯かせて抵抗を止める。

 石のように固まった私を気にかける様子もなく、新さんは強引にガウンのボタンをひとつふたつと外していく。

 鼓動が一気に速くなる。お風呂上りというのもあって顔から湯気が出そうだ。

「これはこうやって着るものだ」

 隠していた胸元が露わになり、赤く染まった肌に空気が触れた。

「あの……」

 恐る恐る顔を上げる。至近距離で視線が絡み、胸がドクンッと大きく高鳴った。
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