婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 ここまでするつもりじゃなかったって言っていた。あれは、初心者の私のペースに合わせようとしたのよね?

 新さんの思いやりに胸がきゅっと締めつけられる。

 言葉も表情も乏しいけれど、なんだかんだ優しい人なのよね。

 グラスを片付け終わったタイミングで新さんが戻ってきた。上下黒色のパジャマはシルク素材で肌触りがよさそうだ。

 肌の色が白いから、暗い色に負けずにとても綺麗に着こなしている。

 こんなモデルみたいに綺麗な男の人が旦那様なのよね……。

 冷蔵庫から取り出した缶ビールを片手に持って振り返った新さんと目が合って、そこで初めて彼にずっと見惚れていたのだと気づく。

 先ほどのキスの余韻がぶり返し、顔が急速に熱くなった。

 さっと目を逸らした私を気に留める様子もなく、新さんは冷蔵庫から次々とチーズや生ハムなど酒のつまみになるものを取り出す。
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