婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「私も食べていいですか?」

 生ハムとクリームチーズとトマト、さらにはマーマレードジャムなどが乗ったクラッカーが、黒マットの味がある大皿に綺麗に並べられている。

「どうぞ」

「いただきます」

 用意されたおつまみはどれもおいしくて、私が抱いていたおつまみの常識を覆された気分だった。

 お父さんもよく晩酌はしていたけれど、魚や肉などを使ってお母さんが作っていた。

「いつもこういったお洒落なおつまみを食べているんですか?」

「料理ができないからな。洒落ているかは知らないけど、作るならこれが定番」

「そうなんですね」

 料理はできないのね。器用になんでもこなす印象だけに意外だ。

「新さんがよければこれからおつまみも私が作っていいですか? ビールやワインならまだしも、日本酒や焼酎にクラッカーは合わないですよね」

「作れるのか?」

「むしろそれしか取り柄がないです。大学で栄養学を学びましたし、家でも暇さえあれば花嫁修業と称して食事を作っていました。母も料理が好きな人だから、東来家のお手伝いさんは数えるほどしかキッチンで火を使っていないんですよ」

 私の説明を聞いて新さんは意外そうに目をしばたかせる。
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