婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「それなら朝ごはんは毎日用意してもいいですか?」

「ああ」

「パンとご飯、どちらが食べやすいとかあります?」

「茉莉子の手料理なら、どっちでも」

 新さんからしてみれば深い意味なんてない言葉なのだろうけれど、私を受け入れているように感じて胸にじんとくるものがあった。

 こんなふうに言ってもらえたのだから頑張って作らないと。

「でも無理しなくていい。茉莉子がハウスキーパーを雇いたいならそれでもいいし」

「とんでもないです。仕事もしていないのに、家事まで他人に任せたら私はぐうたら人間になってしまいます」

 前のめりになりながら訴えると、新さんはふっと笑って目元を和らげた。

「好きにすればいいよ」

 胸がきゅっと鳴る。

 まれに朝は機嫌が悪い人がいるけれど新さんはそうではないみたい。こうして私と会話もしてくれるし、まだ緊張はするけれどこれからはどんどん話しかけていいのかな。

 穏やかな朝食時間を過ごした後は身支度を整えて、新さんの運転する車に乗ってまずは映画館へと向かう。
< 49 / 166 >

この作品をシェア

pagetop