婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 アンシャンテリュー側としては、事業が拡大でき、不利益はないので乗り気ということと、アンシャンテリュー社長とお父さんは昔から仕事での付き合いがあって、互いに尊敬し合っているのも結婚に踏み切らせる大きな要素だった。

 こうしてアンシャンテリュー御曹司、桜宮新との政略結婚が決まったのだが、そう簡単に話が進んだわけではない。

「新さんとふたりで話がしたいのですが、よろしいでしょうか」

 京懐石も残すところデザートのみとなったところで皆に向かって声をかける。

「もちろん。少し外を歩こうか」

 爽やかな笑みを浮かべて新さんはすっと席を立つ。

 お酒が進んですっかり上機嫌のお父さんとお母さん、新さんのご両親を残して、自由に散策していいという庭園に足を向けた。

「その靴で砂利道は歩けないだろう。座って話すか」

 外に出てすぐに、私の足元に視線を落とした後ベンチに目配せをして言う。

 自分が高いヒールの靴を履いてきたのをすっかり忘れていた。

「すみません、ありがとうございます」

「それで? 話って?」

 ベンチに腰掛けるや否や無愛想な声で問われる。
< 6 / 166 >

この作品をシェア

pagetop