婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 先にベッドに横たわった新さんから距離を取って横になろうとしたのだが、シーツの上に無造作に放り出された腕が邪魔をして寝転がれない。

 おそらくは、この腕に頭を乗せろという意味なのだと推測する。しかし読みが間違っていたらだいぶ恥ずかしい。

「あの……」

「なに?」

「そこに、寝るんですか?」

 指で新さんの腕を指差す。

 また返事はない。その代わり、心の奥底を見透かすような眼差しを送られてごくりと喉を鳴らす。

 半信半疑になりながら腕枕に体重を預ける。するとすぐに背中に手が回り強く抱きしめられた。

 今日は手を繋いだだけでキスはしていない。

 するのかな……。

 どこかで期待しているのを自覚して急速に顔が熱くなった。

 おずおずと顔を上げて、間接照明の灯りで影を作った新さんを見つめた。鋭さを残しながらも威圧感が消えている顔が近づいてきて唇を塞がれる。

 一瞬にして全身を溶かすような快楽の波に襲われてくらりとめまいがした。唇を甘噛みされたり、きつく吸われたり、何度も角度を変えて味わうように口づけられるキスに心が激しく揺さぶられる。

 息継ぎができない。溺れそうなほど気持ちがいい。
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