婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 次第にのめり込んでいく感情を抑えきれなくて、逞しい身体に手を伸ばした。

 私の乱れた息遣いと、我慢できなくなって漏れ出た声が静かな部屋にいやらしく響き渡る。

「嫌だったら拒んで」

 掠れた色っぽい声で囁くといとも簡単に私を組み敷き、首筋や鎖骨など順番に舌を這わせて、やがて胸に顔を埋めた。

 太ももに触れた温かい手のひらが私の気持ちを確認しているかのように、ゆっくりとした動きで上ってくる。

「んっ……」

 たまらず身をよじったが、決して嫌だとは思わなかった。それどころかこれから始まる行為に胸が弾み、痛いくらいに強く鳴っている。

 恋愛感情なんて抱いていなかったのに、昨日の夜から今日にかけて一緒に過ごすうちに確実に惹かれている。

 今までは無愛想で意地悪な面しか見てこなかったけれど、本当は優しくて気配りが上手で、妻になった私を大切にしようとしているのが伝わってきた。

 ふとした時に見せる微笑みは素敵だなと思うし、なにもかも完璧そうに見えてそうじゃなかったりする部分はかわいらしいと感じる。
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