婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
目が覚めて首を横に傾けると、私に寄り添って小さな寝息を立てる姿が目に留まって口元が緩んだ。
まだ昨晩の余韻に浸っていたくて、寝顔まで整っている顔を幸せな気持ちで眺める。
しばらくそうしていると、寝返りを打つと同時に目を見開いた新さんが寝惚けた表情で天井を見つめた後、我に返ったように髪をがしがしと掻きながらこちらを向く。
「おはようございます」
微笑みかけると、まぶしいものでも見たかのようにすっと目を細めて「おはよう」と、まだ掠れ気味の声で返される。
「身体はなんともないか?」
「大丈夫です」
この会話、ちょっと恥ずかしいな。
至近距離で目を合わせていられなくなって布団に隠れようとする。そんな私を逃がさないとでもいうように、腕を引っ張られて広い胸の中にすっぽりと収められた。
温もりが心地いい。目をつぶったらまた睡魔に襲われそうだ。
「ずっと我慢していたから、俺としては結婚したらすぐにでも抱くつもりでいた。結果その通りになったけど、茉莉子はそうじゃなかったよな」
唐突に真面目な口調で語りだしたので、夢心地の気分から一瞬にして現実に引き戻される。