婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 私を一人占め……。それって、自惚れてもいいのかな。

 さっきまでなんともなかった心臓が慌ただしくなって顔が火照ってきた。

「実際、今だってしたい」

「こ、こんな朝早くから、なにを言っているんですか……」

 しどろもどろになりながらすぐそばにある胸を軽く小突くと、「冗談だ」と軽くあしらわれた。

 なんだ、冗談か。

 ちょっとは分かりやすい態度になったと思ったのだけれど、そうでもないみたい。

「私はもう起きますね。新さんはまだ寝ていてもいいですよ」

 からかわれたおかげで妙な空気も一掃され、私は新さんを押し退けてベッドから這い出た。

 新さんはのんびりとした動きで上半身を起こし、首を左右に動かしている。それを横目で見届けてから部屋を出て、簡単に身支度を整えて朝食作りに取りかかった。

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