婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「条件というのは?」

「時期的に大学に進学した学生の応募が多かったと聞きました。特に上京してきた若者は生活がかかっているので、シフトにも積極的に協力をする傾向が多いそうです。それに比べて私は週に数回、適度な時間で入りたいと考えていたので……」

「互いの条件が合わないのなら、縁がなかったと思って気持ちを切り替えた方がいい」

「……そうですね」

「他にも理由があるのか?」

「え?」

「歯切れが悪いから」

 やはり隠し事は苦手だ。態度にすぐ出てしまう。

「実はそれ以外にも、新婚なうえに若いから、すぐに子供ができて辞められると困ると言われました」

 本当はこっちが不採用に至った大きな原因だ。身に覚えのある行動を取っているので弁解はできなかった。

「女性は、やはりそういう面で苦労をするんだな」

 わずかに眉間に皺を寄せて小難しい顔になった新さんは、目を伏せてなにやら考え込むように無言になった。

「でも、確かにそうだなって思いました。子供もほしいですし、パートをするのは子供が大きくなってからでもいいのかなって」

「茉莉子はそれでいいのか?」

「はい」

 正直なところ半々な気持ちではある。だけど落ち着いて考えればなにを優先すべきか一目瞭然だ。

「それなら頑張るか、子作り」

 挑発的な眼差しを注がれて心臓が飛び跳ねた。
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