婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 子供がほしいなら取るべき行動はひとつ。自分がどれだけ大胆な発言をしていたのか今になって自覚して、全身が燃えるように熱くなった。

「お酒も入っているし、今日はいつも以上に気持ちがいいかもな」

「なっ……なにを、そんな……」

 激しく動揺してしどろもどろになるし、今夜そういう行為をする気でいる新さんを直視できなくて目はあちこちに泳ぐ。

「楽しみだな」

 気乗りしたようにもからかっているようにも受け取れる、なんともいえない微妙な含み笑いをされて、私は顔を赤く染めて情けなく口を真っ直ぐに結ぶしかなかった。



 ベッドに入って息つく暇もなく強い力で抱きしめられ、情熱的なキスに翻弄される。

 私がお風呂に入っている間にウイスキーにも手を出していたので、酔いは確実に回っているはず。

 さっき言っていたみたいに、新さんが気持ちよくなってくれていたらいいのだけれど。

 いつもより激しい愛撫に、私の方はもうすでに快楽の渦に飲み込まれている。

「あっ……待って……」

「待たない」

 執拗に攻めたてられて意識が飛び飛びになる。

 そんなふたりきりの甘くて激しい空気を切り裂く、電話の着信音が部屋に鳴り響いた。新さんは行為を続けようとするが、私は現実に引き戻されて集中ができない。

 鳴り止まない音に困り果て、「出てください」と力なくつぶやいた。
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