婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
夫婦の形
買い物の帰りにふらっと立ち寄った花屋さんがとても素敵で、薄いピンクと真っ白の芍薬を購入した。
ガラスの花瓶に水を入れてリビングチェストの上に飾る。綺麗だなぁとしばらく眺めていたが、ふと隣に置いてある卓上カレンダーに目がいった。
六月になり、もう間もなく梅雨入りが発表される時期だ。
私が知る限り、例の女性からはあの夜を最後に電話はかかってきていない。
出張など仕事の都合でどんなに帰りが遅くなっても必ず家に帰ってきたし、週末は夫婦で過ごす時間を最優先にしている。
そんな生活をしていて私以外の女性と関係を持つ暇などないはず。
最近では、言われたように心配する必要はなかったのだと思うようになった。
「よしっ」
自分ひとりしかいない部屋で大きな声を出して覚悟を決め、テーブルに置いたままだった妊娠検査薬を手に取ってトイレへと向かった。
毎月数日のずれはあるものの周期は整っている。しかし今月は予定している日からすでに一週間以上過ぎており、月経前症候群である不快な症状が長引いていた。
期待と不安がせめぎあい、心を落ち着かせるために花屋に寄ったくらいには動揺している。