婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 二十二時まで時間はたっぷりとある。

 お祝いのケーキでも買ってこようかな。でも新さんは甘いもの食べられないし。

 シャンパンとか? さすがに張り切り過ぎだと引かれるかな?

 それともいつもより手の込んだ料理を作ってみようかな。

 ああでもないこうでもないと考える時間は幸せで、まだ病院にも行っていないし気が早いと頭で理解していても、喜びを抑えられなかった。

 結局、新さんが好きそうな辛口のシャンパンと、比較的甘みの少ない有名店のチーズケーキを購入して、夕食は以前作った時にかなり好評だったビーフカレーにした。

 十九時半頃に先に食べていていいと連絡をもらったが、もちろん先に食べるなんて野暮な真似はしなかった。

 テレビを見ていても内容は頭に入ってこず、ソファに座ってそわそわしながらクッションを胸元で抱きしめて待っていると新さんが帰ってきた。

 時刻はまだ二十一時を過ぎたばかり。

「おかえりなさい。早かったですね」

 玄関のドアを開けて出迎える。すぐに抱きしめられて「急いで終わらせてきた」と嬉しい言葉をもらう。

「茉莉子からメールが送られてくるなんて珍しいから、早く帰ってきてほしいのかと思って」

「すみません。お仕事に影響させてしまいましたね」

「そんなのは気にしなくていい」

 話をしながら料理の残り香が漂うリビングへと入る。
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