婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 優しい眼差しはずっと見ていたくなるほど素敵で、緊張でドキドキしていた時とは違う高鳴りがまた胸を鼓動させる。

 子供は新さん似がいいな。男の子でも女の子でも、どちらでも美形になるに違いない。

「冷める前に食べよう」

「そうですね」

 無事に報告を終えてやっと料理の味を堪能できる。圧力鍋で煮込んだお肉はとろとろで口に入れた瞬間に溶けてなくなり、我ながらうまくできたと思った。

「うまいな」

 そう言って口いっぱいに頬張る新さんを眺める私の顔には笑みがこぼれる。

 なんて幸せな時間なのだろう。家族が増えたら優しい気持ちになる時間がもっと増えるのかな。

「病院は一番近くの総合病院にしようと思っています」

「いいんじゃないか。いつ行くつもりだ?」

「早すぎてはエコーで赤ちゃんが見えないらしいので、明後日くらいにと考えています」

 その頃には妊娠六週に入るか入らないかになっているはず。

「明後日なら土曜日だよな。俺も一緒に行く」

「え! 新さんもですか?」

「嫌か?」

「嫌だなんてとんでもない。とても心強いです」

 婦人科は検診の際に数回かかった経験があるだけで、正直なところ行きづらいなと感じていた。

 新さんが一緒についてきてくれるなら、だいぶ心にゆとりが持てる。

 それから土曜日まで、お腹の子が無事に育っていますようにと心から祈るばかりだった。
 
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