婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 帰りはスーパーで食材を買い溜めしようと提案された。これは私の体調が優れなくて買い物に行けなくなる可能性を考えてだそうだ。

「買い物くらいできますよ?」

「なにがあるか分からないだろう。うちにいる秘書につわりが酷かった女性がいて、ある日を境
に会社に来られなくなって、そこから三ヶ月間休んだ」

「そうなんですか……」

 動けなくなる人もいるのね。

 実際に起きた話を聞くと、妊娠というものがどれだけ大変なのか思い知らされる。

 アルバイトの面接に落ちた時はショックだったけれど、もし受かっていたらいつまで続けられ
るのかなどの不安材料が増えていただろうから、結果的によかったのだろう。

 一週間は外に出なくてもいいくらいの食料を買い込んでマンションへ戻る。

「疲れただろう。ベッドでもソファでも、好きなところで休んでいるといいよ」

「新さんは?」

「読みたい本があるから、それを」

「それなら私もソファで休みます」

 せっかく一日中一緒にいられるのだから側にいたい。

「さっき買ったルイボスティー飲んでみるか?」

 妊娠中はカフェインが入ったものは極力飲まない方がいいので、オーガニックのものやノンカフェインのコーヒーなどを幾つか購入した。

「飲みたいです」

 ソファから立ち上がると、やんわりと手で制される。

「俺がやるから」

「でも……」

「飲み物くらい入れられる」
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