Lose everything

桜子は、翌日会社を休んで
陽真の実家に連絡をした。
どうしても、高木家の御両親に
謝罪をしたかった。

電話には、陽真のお母さんが
でられて
いきなり・・謝罪をされた・・が・・
私に責任が多いにありますと
伝えた。

陽真のお母さんから
お父さんが一度
私の両親にもお会いして
謝罪をしたいと言われている
と、聞いて
その夜に、私の実家にみえた。




昨夜の内に
私の両親には経緯を話していた。

母からは、酷く叱られた。

母は、この事を懸念していたんだ
と、やっとわかった。

父は、キャンセル料を
陽真一人に払わすわけには
いかないと言った。

夜に陽真の両親と
私の両親が話し
キャンセル料は、
両家で折半とした。

式の取り止めは
陽真がお詫びの言葉を添えて
発送を依頼していたので、
その費用も折半となり
私の父から陽真のお父さんへ
返された。

どんな気持ちで
式場にキャンセルに行ったのか・・・
どんな気持ちで
お詫びのハガキを依頼したのか・・・
陽真の気持ちを考えると
たまらない気持ちになった。

「私の軽率な行動で
陽真さんを傷つける事になり
御両親や関係者に大変なご迷惑
ご心配をかけてしまいまして
申し訳ありませんでした。」
と、頭を下げた。

陽真のお父さんは
「陽真が、浮かれていて
きちんと、桜子さんとの
気持ち確認せずに先走った事にも
問題があったと私は思っています。

ですが、桜子さんとの結婚の
報告を私と妻にしてきた時の
息子の顔を、私は今まで見たことが
なくて、桜子さんの事が
愛しくてたまらないと言うことが
わかり嬉しかったのですよ。

まぁ、10年も片想いしていたのには
驚きましたが。
ですが、土曜日にきた陽真は、
魂を抜かれたようになっていまして

話を聞いて
桜子さんに腹立たしいとか
そんな気持ちもなく
ただ、ただ、息子の悲しみを
宿した目にたまらない気持ち
だけでした。

小さい頃から
私にわがままを言ったり
お願いや頼み事をしたことが
なかったあの子が
仕事を辞めたいから
協力してもらえないか
と、頭を下げたのです。

桜子さんと同じ職場にいることが
できないと涙を流すあの子に
かけてやる言葉も
情けないことに見つからず
理不尽でしたが
私は、私の力を使い
息子を私の会社に入れました。

私と私の会社の社長は
同級で友人なんです。
そして、その友人と桜子さんの
勤める会社の専務が友人で。
話しはスムーズにいきました。

陽真は、すべてを片付けて
月曜日には新転地に向かいました。

いくら私の息子とはいえ
地位なんか与える事はありません。

仕事にプライドのあるあの子が
新人社員からやり直す事に
異議はありませんでした。

自分を追い込んでくると
涙をためた目で
私に強く語りました。

こんな話をしたのは
当時の陽真の様子を
知って欲しかった、その気持ちだけです。

桜子さんには、責任を感じることなく
幸せになって下さい。
それが、陽真の願いです。」
と、お父さんに言われて

私も母も涙が止まらなかった。
父は、
「本当に、申し訳ありませんでした。」
と、陽真の両親に頭を下げた。
< 21 / 72 >

この作品をシェア

pagetop