Lose everything
9
今日も桜子を元気づけるため
二人で食べて飲んだ。
その中で
桜子は、また、一人暮らしに
戻る事を話してきた。
「お父さんもお母さんからも
気を使われている感が
ひしひしと感じられるんだよね。」
と、情けなさそうに
話す桜子に
「いいんじゃない。
一人でいるのが辛いときは
一緒にいるからさ。」
と、私が言うと
「どんだけ渉に助けられているか
わからないよ。」
と、言いながら寂しげだ。
桜子は、自分で気づいているのか
秀一さんの結婚が決まった時より
酷い顔をしている。
秀一さんの時も辛かったはずだけど
あの時は、高木がいたからなぁ
高木。もう、桜子は私では
助けられないんだよ。
あんたじゃないと
ダメなんだよ。
それなのに
あんた、どこで何をしてるの?
桜子は、高木の両親から
今、高木がどこにいて
何をしているか
聞かされなかったし
聞くこともできなかった。
と、言っていた。
店の前で桜子と別れたとき
一人の女の人が、桜子の後姿を
ずっと見ていた。
「あの?あの女性に何か?』
と、声をかけると
びっくりして彼女は振り向き
下を向いた
「宮下を知ってるの?」
と、再び訊くと
はっとした顔をしたから
「私は、桜子と友達よ。」
と、彼女に伝えた。
彼女は、瞳にいっぱい涙をためた。
そんな彼女を私は、近くのカフェに
つれて入った。
椅子に座らせ
コーヒーを2つ頼んで
「名前を訊いても?」
と、問うと
「私は・・・高木・・千紗・・です。」
「ん?高木?もしかして陽真の?」
「‥‥はい‥‥妹です。義理ですが。」
「そう、あなたが。
私は、高木とはわりと仲良かったの
桜子と三人でね。」
「そうなんですね。
あの、桜子さんは大丈夫でしょうか?」
「う~ん、あなたに言うのは
違うかもしれないけど
正直、大丈夫ではない。
社内とかは、高木君が
きちんとしてくれていたから
問題ないけど。
桜子の気持ちがね。」
「‥‥‥そう‥‥ですよね‥‥‥
あの‥‥‥私は、はるちゃんの事が
ずっと好きだったんです。
はるちゃんには、まったく相手に
されていませんでしたが
結婚が決まり、はるちゃんの
幸せそうな顔をみて
諦めないとって
本当に何日も何日も
泣いて悩んで戦いました。
なのに、あの日、
桜子さんとあの男性をみて、
感情が押さえられなくなり
あの夜、はるちゃんに
写真を送ってしまいました。
だけど・・・・
こんな、大変な事になるとか
思っていなかったのです‥‥‥‥
私‥‥‥‥わたし‥‥‥」
「あの、千紗さん
写真見せてもらっても?」
と、渉が言うと
千紗さんは、「はい。」
と、言って恐々見せてくれた。
桜子が秀一さんの腕に腕を回して
すり寄っている写真
桜子が秀一の腕の匂いを嗅いで写真
秀一さんにコツンとされている写真
桜子と秀一さんが抱きあっている写真
桜子と秀一さんが顔を近づけて
話している写真
これは、アングルによっては
キスをしているように見える
どの写真も桜子は、お酒のせいもあり
顔も赤く潤んで、にっこり笑いながら
幸せそうな顔をしていた。
これは・・・・
私は、桜子も気にしていると思い
千紗さんに無理を言って
写真をもらった。
それから、桜子と秀一さんの
説明をした。
千紗は、自分とはるちゃんみたい
だと考えていた。
幼馴染みではないが。
千紗は、桜子が知らないとは
思ってなくて
今、陽真は北海道で仕事を
していると話した。
今でも、ずっと桜子さんを
想っていて、気持ちと戦っている事も
話した。
渉は、実は桜子も渉も
現在の陽真の事は
何一つ知らなかったと話すと
住んでいるマンションは
わかると言い
携帯だけはわからない
父と母だけが知っていると
伝えた。
千紗は、
「義兄さんに幸せになって欲しい。」
と、渉に言い
「自分は、どんなに苦しくても
義兄さんの事はきっちりあきらめて
二度と近づかない。」
と、渉に話して
渉に頭を下げながら
「桜子さんにも謝りたいが
桜子さんにも二度と近づきません。」
と、もう一度、渉に頭を下げて
千紗と渉は、別れた。