Lose everything
「‥‥‥‥桜子」
彼・・の・・声が・・聞こ・・・・えた。
幻聴・・・・・・?
・・・・後を‥‥‥‥‥振り向くと・・・・・
「···は・・・・・るま・・・っ」
彼が・・・・
陽真が・・・・
・・・・・・立っていた。
私の‥‥‥手が‥‥‥‥伸び‥‥ると‥‥
陽真は‥‥
手をぐっと引き
私を抱き締めた。
「桜子・・桜子・・・桜子・・・・
何度も私の名前を呼ぶ彼に
応えるべき彼の背中に
手を回して彼の服を握り絞め
「‥‥‥‥‥愛し‥‥て‥‥るっ‥‥‥‥‥」
と、伝えた。
彼は、はっと、顔をあげて
私の目を見て・・・・・
見るみる内に彼の瞳に
涙がたまり
一気に溢れだした。
その涙を親指で触ると
彼は‥‥私のおでこに自分のおでこをつけ
「何度も・・何度・・も・・忘れようとした
だけど・・・
忘れられないんだ。
桜子の微笑む顔を
桜子が照れた顔も
桜子が怒る顔も
桜子の泣き顔すらも
俺の頭の中から
出ていかないんだ。
勝手な事を言っていると思う
無責任なことをした
バカな俺だけど
桜子のそばにいるのは
俺じゃないと嫌なんだ。
桜子‥‥‥‥愛してる‥‥‥
愛してるんだ。
もう一度だけ、
俺をそばに置いてくれないか?」
と、言う俺に
桜子は、何度も頷きながら
「‥‥ずっ‥‥‥と‥‥いて‥‥欲しい‥‥」
と、言ってくれた。
俺は改めて桜子を抱き締めた。
桜子の横にいた男性に
お見合い相手にお詫びをしようと・・・・
・・・????????・・・・
声をかけようとした・・・が・・・
その男性は、50位の方で
俺達を見てニコニコされていた。
俺は、思わず那木さんが
いた方を見ると
那木さんと秀一さんがいて
那木さんが泣き笑いをしていた。
あちゃ・・・・嵌められた・・
すると男性が
「私は、心療内科医の北野と
いいます。
宮下さんの主治医といいますか。」
と、北野先生は頭をかきながらいった。
えっ、先生?と、思い
「高木です、高木 陽真と言います。
桜子は、桜子はどこが悪いのですか?」
と、焦る俺に
「あ~、いえ、体の内部が
悪いのではなく、心が少し
疲れているだけです。
良い特効薬が見つかったようですので
直ぐに治りますよ。」
と、北野先生は、
俺と桜子を見ながら
優しい顔で言った。
俺が桜子を見ると
桜子は、泣きそうな
恥ずかしそうな顔をした。
そこに、秀一さんと那木さんが
やってきて
那木さんは、桜子を抱き締め
秀一さんは、俺とがっちり握手を
した。
那木さんは俺の腕に
拳をぶつけながら
「この、ヘタレが。」
と、笑いながら言い
「秀一さん、渉さん
ありがとうございます。
本当にありがとうございます。
こんな、俺を見捨てずに
いてくれて。」
と、言う俺に秀一さんは、
「俺は・・あっとね
そんな良いものではなく
罪悪感かな。」
と、笑ってくれて
「あんたが・高木が
どんな想いで
桜子のそばにいたか
知っていたからね。
桜子の事をそう簡単に
嫌ったり離れたり
できるわけないし。」
と、言いながら
渉さんは苦笑いをした。
そんな渉さんの横にいて
困った顔をしている桜子を
二人がいる前だけど
俺は抱き締めて
「桜子、どうした?何か不安?」
と、訊ねると
桜子は、俺の腕の中で
首を横に振り
俺に身体を預けてきた。