Lose everything
少し時間がかかってしまって
慌て病院へもどると
陽真の病室から
「本当に、すみませんでした。
私を庇ったせいで
お怪我をされたのですから
私に看護させて下さい。」
と、女性の声・・・
お義母さんが
「私もおりますし
この子の恋人も駆け付けて
いますので、心配入りません。」
と、言うが
「いいえ、是非
お願い致します。」
と、押し問答が続いていた。
陽真の声が聞こえないけど
付き添って良いと思っているの
だろうか
と、思い病室に入るのを
躊躇していると
「桜子?」
と、後ろから声をかけられ
振り向くと車椅子に乗せられた
陽真だった。
「陽真?」
「ん?検査に行ってきたんだ。
どうした?」
「そう、大丈夫だったの?」
と、話ながら
車椅子を押してくれていた
看護師さんにお礼をいい
車椅子を受けとると
「はいらないの?」
「うん、なんだか・・」
と、言っている私をよそに
陽真は、車椅子に座りながら
ドアを開けた。
中に入ると
お義母さんと綺麗な女性が
こちらを向いた。
「義母さん、こちらは?」
と、陽真。
陽真は、女性の事は覚えてない?
「陽真さん、こちらは・・」
と、お義母さんが説明しようと
「私は、中山 優(なかやま ゆう)
と、申します。
先日は、助けて頂いて
ありがとうございます。
お母様にもお伝えしましたが
私に看護をさせて頂けませんか?」
と、頭を下げながら訴えていた。
お義母さんは、私の顔を見ながら
困ったと表情をみせた。
私もお義母さんに苦笑いをしながら
陽真の意思に任せる。
陽真は、
「あなただったのですね。
わざわざ、来ていただいて
ありがとうございます。
ですが、看護も付き添いも
結構です。
私は、彼女でないと
ダメなんです。
情けない男だと思われるでしょうが
彼女が、そばにいないと
不安で居たたまれないのです。
だから、彼女が不安に思うこと
嫌な思いをするようなことをして
嫌われたくないのです。
それに、母もおりますから。
私の事は、気になさらないで
お帰り下さい。」
と、私の手を握りながら
中山さんに話をした。
私は恥ずかしかったが
お義母さんは、ニコニコされていた。
中山さんは、それでも食い下がって
いたらお義母さんが
「息子は、まだ手術が
すんだばかりですので
お引き取りください。
私も、彼女以外に息子を
任せきりませんし主人にも
叱られますので。」
と、言うと
中山さんは、引かざる得なくなり
「お騒がせしました。
また、お見舞いに寄らせて下さい。
お大事に。」
と、頭を下げて帰った。
ドアがしまると
三人で、ため息をついて
顔を見合わせて笑った。