Lose everything

婚活主催者には
交際を前提に何度か会うことを
進められて
時間の許す限り
食事をしたり
飲みに出かけたりした。
もちろん、LINEや電話も。

私は、顕の事も正直に話した。

冴島さんは、
「無理に忘れようとすると
余計にブレーキがかかるから
そんな必要はない
僕自身を少しずつ渉さんの中に
入れて下さい。
入れる事ができなかったら
きっと無理だと言うことです。」
と、言ってくれた。

ああ、彼となら·····と
私の心に彼の言葉が
ストンと入ってきた。

土日は、ドライブに行ったり
美術館に行ったりした。

この人は、本当に
穏やかなで、優しい人なんだと思った。

そんな日々の中
週の始め
退社後、冴島さんと会うことに
なったので、待ち合わせに向かうと····

「渉!!」
呼ばれた声で、誰かわかった。

振り向かないわけにはいかない。
ゆっくり、ふりかえると
そこに立っていのは、やはり
「‥‥‥け‥‥ん‥‥‥」
「ちょっと、こい。」
「なに?私、用事あるのだけど。」
「なんの用事だ?」
と、いいあっていると
「渉さん?」
「あっ、冴島さん。」
「これは、助ける?それとも
諦観する?」
「クスクスっ、冴島さん。
こんなときは、女性を助けるのでは?」
「渉さんは、助けて欲しい?」
「う~ん、彼と話をつけないと
いけないのかな、と。」
「うん、わかった。
どんな結果でも、連絡して。」
「うふふっ、必ず」
と、言うと冴島さんは、
顕に一度頭を下げて、その場を去った。

私は、冴島さんの後姿を見ながら
本当に面白い人だわ。
と、思っていたが
フッと我に帰り
「話なら、あそこでして」
と、公園のベンチを指差し
そのまま、そこをめがけて歩くと
「えっ、ちょっと、まて。」
と、顕も追ってきた。

ベンチに座り
「なに?」
と、顕を見ると
「俺が、熱出した時に
来たんだってな。ごめん」
「ああ、彼女が言ったんだ。
言わなくて良いと言ったのに。」
「彼女じゃない。
あの子は、会社の後輩で
一緒に組んで仕事をしていたから
心配されただけだ。」
「そう、で?」
「で?ってお前。
あの子が、俺の部屋にいたから
誤解して怒って、別れると
言ったんだろ?」
「誤解?違うでしょ。
勝手に彼女が入ったとでも?
えっ、合鍵渡してるの?」
「ばかっ、何言ってんだよ。
渡すわけないだろ。」
「なら、やはり、
顕がいれたんじゃない。」
「覚えてないんだ。
きつくてたまらなくて。」
「ふ~ん。自分が許した人しか
入れない、あなたが?」
「だから、きつくて」
「そう?で、なに?」
「なに?って。
俺は、別れたつもりないからな」
「私は、別れたの。
顕だって、あれから二ヶ月以上
たってるのに。今更?」
「少し様子みて。
渉から連絡あるのを待っていた
だけど、無くて
こちらからかけたら、
今度は、繋がらなくて
焦って、マンションに行ったけど
お前居なくて。
だから会社で待つことにした。」
「そう、お疲れ様。
私は、顕とはもう終わってるの
あなたも、彼女と付き合えば。」
「だから、彼女じゃないって。」
「はぁっ、顕。
私、知ってるんだよ。」
「なっ、何をだよ。」
< 63 / 72 >

この作品をシェア

pagetop