俺様アイドルに求愛されてます!!〜プリンセスがプリンス?〜
「もしもし」
『あー、どうした?』
「社長。お話したいことがあるんですけど」
『そろそろ来ると思ってた。今日の午後空いてるから、雷斗って言うやつと来い。あっちの事務所には俺から言っとくから』
「はい。お願いします」
電話を切ったあと雷斗に、そのことを連絡し、ハルカは男装の準備を始めた。
1時間ほどたち、事務所に着くと私服姿の雷斗がいた。
「おーい」
「おー。久しぶり」
「うん。行こっか」
「おう」
平日のため練習生が少なく、建物の中は静かになっている。
社長室につきドアを開けると、お互いの社長が話をしていた。
「お待たせしました」
「おう。座れ」
「「はい」」
「それで、なんだ話って?」
「俺の話なんですど、付き合ってるって言う噂あるじゃないですか」
「ああ、」
「あれ、私」
「は?」
雷斗の事務所の社長は驚いたような顔をしている。
そうか、言ってなかった。
瑠樺は、ウィッグに手を伸ばし外す。
それを見た向こうの社長は先程よりも間抜けな顔をしている。
「すいませんね、こいつ男の子じゃないんですよ。」
「そうですか。すごくびっくりしました」
「そうですよね。私もこれ以上隠すのは出来ないと思います。だから……」
「公表したいと?」
「はい」
「公表したらどうなるかは分からない。批判する人もいれば、ファンでいてくれる人もいる。でも、これだけはわかる。お前ちは傷つくぞ」
いつも明るい社長は、今日はすごく怖く見えた。
聞いた話には、昔は社長もアイドルとして活動していたそうだ。
人気がではじめた時、今の奥さんと出会い、それがメディアによって世間に知れ渡ってしまった。
社長のファンは減り、アイドル活動は出来なくなるほどになり最後には会社から切り捨てられた。
そのことから今の会社を一から奥さんと一緒につくりあげてきた。
社長は一番分かっていた、
この後のことを。
だからこそ、応援もしてくれるし、反対もしてくれる。
「お前たちがそれでいいというのであれば、俺は全力でフォローする。だが、中途半端な気持ちなら、今すぐやめろ」
「私も同じ気持ちだよ。雷斗は、夜菜としっかり話し合ったか?まずはそれが大事だろ」
「それは大丈夫です」
ドアが開き、そこには夜菜が立っていた。
「夜菜!!」
「よ!ハルカ」
「なんで?」
「俺が呼んだ」
「俺たちはどんな立場になっても、トップに戻ってきます。俺たち、天才なんで」
夜菜が来たことにより、一瞬にして部屋の中の空気感が変わった。
気が楽になり、今ならなんでも出来そうだ、そう思ってしまう。
「お願いします。力を貸してください」
「「お願いします」」
「そうだな」
「いいだろ」
話し合いは終わり、その日から3人は一切の仕事を引き受けないことにした。
その事によりSNS上では、解散や引退などと騒がれ始める。
しかし、そんなことには目もくれず3人はある作戦を着々と計画している。
冬休みに入り、仕事を断り始めてから3ヶ月がたった。
「やっと出来た」
「ああ」
「疲れたー」
3人はあるコンサートを開くようにした。
その場で瑠樺の正体と、2人が付き合っていること。
そして……こと。
そのコンサートの曲は全て新しい新曲になっており、衣装はハルカのお母さん。
メイクは、ハルカのお父さんがしてくれる。
また、社長も10数年ぶりにアイドルとして曲を披露することになった。
コンサートの呼び掛けはお互いのファンクラブとSNSで行った。
チケットはすぐに完売し、「復活」「謎が解決」など、色んな説が新聞やニュースに取り上げられた。
「成功するかな?」
「大丈夫だろ」
「まー、俺は失敗してもいいけどね。それで2人は別れてハルカは俺が貰うー」
「な、何言ってるの」
「お前、頭狂ったか」
「そんな事ねーよ。俺はハルカのこと好きだし」
「っち。こいつは俺のだ、ばーか」
そう言って強引にキスをされた。
う、そ。
キスされたー!!!
「顔真っ赤」
「うるさい!」
「はいはい。イチャイチャするなよリア充共め。爆発しろ」
コンサートまであと一週間。
成功することを願って、3人は解散した。
家に着いたハルカは、深くため息をついた。
これから、どうなるのか。
無関係なふたりを巻き込んでいいのか?
不安が胸いっぱいに広がる。
「大丈夫。私なら、できる」
きっとね……。