【完】喫茶「ベゴニア」の奇跡
「・・・こんばんは」
一歩、足を踏み入れる。大好きなコーヒーの香りがまだ立ち込める空気の中、また一歩と足を進めた。いつもかかっているジャズが閉店後だから鳴っておらず、普段とはまた違う雰囲気を醸し出している。新鮮味を感じながら、のそりのそりと足を進める。奥からガサガサと物音が聞こえる。おそらく水樹くんはまだ片付けの途中なのだろう。
いずれ姿を現わすだろうと思い、いつもの特等席である一番奥のカウンター席に腰掛けた。
「わぁ、すごく綺麗・・・・」
カウンター席にからいつも見ているガラス張りの壁の向こう。その景色の思わず声をあげた。商店街中に色とりどりの光が灯され、少し高台にある住宅街も綺麗にイルミネーションが施されていたのだ。真正面から見るよりも、少し高い位置から見た方がとても良い。独り占めしている気分になる。全く違う景色に移り変わったこの街が、とても輝いて見えた。
「来てたんだね、奈央ちゃん」
「水樹くん・・・!ごめん勝手に入っちゃって」
「いいよ別に。ごめんね片付け先に終わらせてくるから」
ガラスに張り付くように、景色に見惚れていたら、裏から水樹くんが表に出てきていた。今日も綺麗で美しくて格好良い。そしてその手には新鮮な芳ばしい香りが溢れ出すホットコーヒー。それをそのまま私の正面に置いた。
「良かったら、どうぞ」
そう言い残して、まだカウンターの上に置いたままだった物品を抱えて姿を消してしまった。そういえばクリスマスの時期は人が増えるから忙しくなると前に言っていたような気がする。明日も営業だろうしこんな夜遅くに悪いことしたな、なんて思ったがこの日時を指定したのは水樹くんなのだ。気にしないでおこう。それに、美味しいコーヒーも頂いてしまった。
まあ、私もこの気持ちを抱えたまま、年が開けることができない。
コーヒーが冷めないうちに、さっそく頂くことにした。ふわりと、立ち上ってくる匂いが鼻をくすぐる。柔らかい温かみをくれるこのコーヒーに表情を綻ばせる。安定剤のようにひどく落ち着かせるのだ。
この溢れんばかりの思いを綺麗に整えるように。
一歩、足を踏み入れる。大好きなコーヒーの香りがまだ立ち込める空気の中、また一歩と足を進めた。いつもかかっているジャズが閉店後だから鳴っておらず、普段とはまた違う雰囲気を醸し出している。新鮮味を感じながら、のそりのそりと足を進める。奥からガサガサと物音が聞こえる。おそらく水樹くんはまだ片付けの途中なのだろう。
いずれ姿を現わすだろうと思い、いつもの特等席である一番奥のカウンター席に腰掛けた。
「わぁ、すごく綺麗・・・・」
カウンター席にからいつも見ているガラス張りの壁の向こう。その景色の思わず声をあげた。商店街中に色とりどりの光が灯され、少し高台にある住宅街も綺麗にイルミネーションが施されていたのだ。真正面から見るよりも、少し高い位置から見た方がとても良い。独り占めしている気分になる。全く違う景色に移り変わったこの街が、とても輝いて見えた。
「来てたんだね、奈央ちゃん」
「水樹くん・・・!ごめん勝手に入っちゃって」
「いいよ別に。ごめんね片付け先に終わらせてくるから」
ガラスに張り付くように、景色に見惚れていたら、裏から水樹くんが表に出てきていた。今日も綺麗で美しくて格好良い。そしてその手には新鮮な芳ばしい香りが溢れ出すホットコーヒー。それをそのまま私の正面に置いた。
「良かったら、どうぞ」
そう言い残して、まだカウンターの上に置いたままだった物品を抱えて姿を消してしまった。そういえばクリスマスの時期は人が増えるから忙しくなると前に言っていたような気がする。明日も営業だろうしこんな夜遅くに悪いことしたな、なんて思ったがこの日時を指定したのは水樹くんなのだ。気にしないでおこう。それに、美味しいコーヒーも頂いてしまった。
まあ、私もこの気持ちを抱えたまま、年が開けることができない。
コーヒーが冷めないうちに、さっそく頂くことにした。ふわりと、立ち上ってくる匂いが鼻をくすぐる。柔らかい温かみをくれるこのコーヒーに表情を綻ばせる。安定剤のようにひどく落ち着かせるのだ。
この溢れんばかりの思いを綺麗に整えるように。