【完】喫茶「ベゴニア」の奇跡
ーーー後日、晴れて友人から恋人になれたのはいいものの、仕事が忙しさは金曜日まで続いた。結局次に喫茶「ベコニア」に足を運ぶことができたのは土曜日の午前中。いつものようにカウンターの奥の席に座る。もう商店街の飾り付けはなくなり少し寂しい景色に戻ってしまったが、今ではすっかりお気に入りの街になってしまった。

「はい、お待たせ」
「ありがとう・・・はあ、すごく良い香り。落ち着く」

そして私が来ること事前に知っていた水樹くんは、すぐにコーヒーを淹れてくれる。朝から水樹くんが淹れたコーヒーを飲めるなんて、なんて最高な週末なんだ。仕事納めを無事に終え、忘年会で疲れた心身によく染み込んでくる。ああ、落ち着く。

私の正面に立っていた水樹くんは「そういえば」と口を開く。

「年始いつか空いてる?」
「?うん・・・特に用ないけど」
「良かった。初詣一緒に行かない?」

デートのお誘いだとすぐに分かり、コーヒーの魔法で半分溶けていた私はバッと身体を勢いよく起こす。もちろん答えは一択だ。

「いく・・・!行きたい!」

最近目紛しい毎日で実感はなかったが、初詣と言う言葉を聞いてもうあと数日後には今年が終わってしまうのかと驚く。デートの約束に舞い上がっていることを察したのか、水樹くんは嬉しそうに微笑む。

ーーその次の瞬間、勢いよくドアを開ける音が聞こえる

「よーっ、お二人さん!」
扉を開けて入ってきたのは由希くんだった。いつものように思い荷物は抱えておらず今日はトートバック1つ。あまりのハイテンションでの登場に水樹くんは「由希?」と声を掛ける。初めて由希くんとここで会った時にように、彼はニタリニタリとした表情をして、そのまま私たちの元へズカズカと歩いてくる。
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