【完】喫茶「ベゴニア」の奇跡
水樹くん様子にピンときてしまった私は、由希くんをじとりと睨むように見る。
「いやあ、2人がくっついてくれたおかげで完結できたよありがとう」
「待って、前に言ってたモデルって」
「もちろん水樹だよ。もちろん奈央ちゃんもね」
当たり前かのようにツラツラとこの作品を書き始めた経緯を話し出す。あの日喫茶店で由希くんと私が初めて会った日、あれはどうやら本人に合わないとイメージが湧かないと待ち伏せをされていたらしい。公園で会った時もあれよあれよというまに由希くんの言葉に乗せられたのも全て彼の計画通りだったということか。友人から恋人になるということも、全部最初から予想して通りだったというのか。
「・・・・」
「ちゃんと形になったら2人にはプレゼントするよ。もちろん俺のサイン付きで」
そう言ってバチリとウインクを決める由希くん。いや、それでも私が水樹くんと一緒になれたのも彼のおかげなのは変わりないのだが。それでも由希くんの手のひらの上で転がされた感が否めない。
「でも本当に嬉しい、心から祝福するよ」
でも目に薄膜を貼らせて喜びを伝えてくれる彼を見て、私たちは何も文句は言えないのだ。「さあ、コーヒーで乾杯しよう」と由希くんは2人分のコーヒーと1杯の砂糖たっぷりのカフェオレを注文をする。普通乾杯ってお酒じゃないのかなと思うが、まあ私たちには合っている気がする。
それぞれ飲み物を受け取る。しかしそこで水樹くんは「ところで何に乾杯するの?」と問う。
由希くんはそうだなあと少し考えた後、「じゃあ」とカップを少し高い位置に掲げる。
「これから始まる2人の新しい日々に、乾杯」
この時に飲んだコーヒーの味は、私は一生忘れないだろう。
喫茶「ベコニア」の奇跡 【完】