初めてのお見舞い ~15年目の小さな試練 番外編(1)~
 そのまま、ハルはもたれていたオレの半身からずるりと滑り落ちるようにして、オレの膝に頭を落とした。

「え、ハルちゃん!?」

 えみちゃんが驚いたように立ち上がる。

「あ、大丈夫。寝てるだけだから」

 オレはハルの身体を少し動かして、楽な体勢にする。
 一人で部屋に戻りたくないのなら、もう少し眠りが深くなるまで、リビングにいればいい。

「でも」

「あ、じゃあ、そのピアノの横にある籠の中から、タオルケット取ってくれる?」

「うん! ちょっと待ってね」

 えみちゃんは急ぎ足でピアノの方に移動して、「これかな?」と籠の中からタオルケットを取り出した。

「うわ。すごく軽くて柔らかい」

「気持ちいいだろ? 六重ガーゼなんだって」

 手を伸ばして受け取り、ふわりとハルにかける。

 軽すぎてすぐには落ちてこない上掛けがハルの身体に沿うのを待ってから、裾を引き掛けなおす。ついでに、ハルの髪をなでながら整えていると、

「愛しくて仕方ないって空気、ダダ洩れだよね」

 えみちゃんが感心したように言い、女子二人がまた笑った。

「そりゃもう、愛しすぎてとても隠しきれないでしょ」

 その言葉に、また場が沸く。

 今、ハルが起きていたら、きっと真っ赤になるんだろうな。

 なんて、そんなことを思いながら、ハルの髪をなで、背をなで……。



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