初めてのお見舞い ~15年目の小さな試練 番外編(1)~
 それから、十分くらい話した後、誰からともなく、そろそろお開きにしようかという空気となった。

「休みの日に、長々とごめんね」

「ハルちゃん、疲れちゃったかな?」

「明日、学校来れそう?」

 みんな代わる代わる、ハルの顔を見に来ては何かしらの声をかけていく。

 だけど、ハルはぐっすり眠っていて目を覚まさない。

「今度はハルちゃん、元気な時に遊びたいね」

「そうだね。涼しくなったら、ぜひ」

 今既に良くない体調は、夏本番になると、もっと悪くなる。土日は多分、ほとんど起きられない。
 その上、夏休みの最初は例年通り検査入院の予定で、その後は別荘で避暑。

「今日は本当にありがとう」

 ハルの背に手を置きながら、座ったままであいさつしていると、沙代さんがリビングの入り口から声をかけてくれた。

「叶太さん、お車の準備ができましたよ」

「ありがとう」

「こちらへどうぞ」

 沙代さんの言葉に促されて、一人、また一人とリビングを後にした。

 オレは見送りはパス。ハルの側を離れる気にはとてもならない。

 最後にえみちゃんが、ハルの顔を覗き込んで、

「ハルちゃん、またね」

 と声をかけ、オレに向かって軽く両手を合わせた。

「ホントごめんね、突然、お邪魔しちゃって」

「ううん。ハル、すごく楽しそうだった。来てくれてありがとう。これからもよろしく」

 そう。

 苦手なタイプかと思っていたけど、気が付くとハルはえみちゃんとすっかり仲良くなっていたらしい。いつかのカフェでも、ハルはとても楽しそうにおしゃべりに興じていた。

「ありがとう!」

 えみちゃんはニコリと満面の笑みを浮かべた。

「それじゃあ、ハルちゃん、お大事に!」

「ああ、気を付けて帰ってね」



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