初めてのお見舞い ~15年目の小さな試練 番外編(1)~
「ギリギリに起こしたのも、来客があるから昼寝をしないって言うのを無理に寝かせたのもオレだよ」

 笑いながら、ハルが立ち上がるのをそっと手伝う。

 よし、顔色も悪くないし、ふらついてもいない。

 これなら起きていても大丈夫かな?

 来客があるからって、ハルが着ているのはパジャマじゃなくてしわになりにくいゆったりとしたワンピース。それに、薄手のカーディガンを羽織らせる。

「はい、ハル」

「ありがとう」

 ハルはニコッと優しい笑顔を浮かべて、オレを見上げる。

 可愛い! 抱きしめたい!

 と言うか、思うと同時に、もう抱きしめていた。
 そのまま、手ぐしでハルの髪を整える。

 準備完了。このままリビングに移動すればいい。

 その時、ピンポーンと遠くでインターホンが鳴るのが聞こえた。

「来たかな?」

「わ。大変」

 ハルが慌てて移動しようとするのを止める。

「沙代さんが、リビングに通してくれるから、慌てなくても大丈夫だよ」

「でも」

「ハル。みんな、遊びに来るんじゃなくて、ハルのお見舞いにくるんだからね? ハルは無理しない。じゃなきゃ、おかしいでしょ?」

「……はい」

 少しばかり納得のいかなさそうなハルの頭をぐりぐりなでて、頬にキスをして、それから二人でリビングへと向かった。




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