初めてのお見舞い ~15年目の小さな試練 番外編(1)~
「ハルちゃん! 起きてて大丈夫なの!?」

 リビングへのドアを開けると、今井が飛駆け寄ってくる。

「あ、うん。大丈夫。心配かけてごめんね」

 そう答えながら、ハルは穏やかに微笑んだ。

「座ろうか?」

 そう言って、ハルの肩を抱いてソファへ誘導。

「みんなも座ってね」

 と、リビングへ目をやった瞬間、予定外の人物を見つけて、視線が止まる。

 ……え? なんで、えみちゃん?

 ローテーブルを挟んだ向こうでは、少しばかり小さくなって、両手を振るえみちゃんがいた。

「班メンバーで集まるって聞いたんだけど、どうしてもお見舞い来たくて。混ざっちゃって、ごめんね」

 えみちゃんの言葉にどう答えようかと迷っていると、ハルが笑顔で言葉を返した。

「ううん。お休みの日にわざわざありがとう」

 ……あれ?

 内心首を傾げていると、ハルは「あ」と声を上げ、オレを見上げて申しわけなさそうな顔をした。

「ごめんね、カナ」

「ん?」

「あの……昨日、えみちゃんからメールもらって、わたしが、ぜひ来てってお返事したの。……で、うっかりカナに言い忘れちゃった」

 ああ、なるほど。

 いくらハルに四六時中張りついてるって兄貴にからかわれても、本当に二十四時間な訳もなく、当然、死角はある。

「謝ることないよ」

 そう言って、ハルを抱き寄せ頭にキスを落とす。

 瞬間、えみちゃんを筆頭に女子三人が歓声を上げる。多分、オレは今、とろけそうなと兄貴が言うところの、甘すぎる表情をさらしているのだろう。

「……カナ」

 ハルが困った顔でオレを押し戻すのを見て、今度は部屋の中に笑い声が満ち溢れた。
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