初めてのお見舞い ~15年目の小さな試練 番外編(1)~
「ムチャクチャ豪邸で、家間違ってたらどうしよって、インターホン押すまで三分悩んだよ」

「三分はないでしょ、三分は!」

「お庭も広そうだよね~」

「広そうってか、明らかに広いよね?」

「公園みたい!」




「え、うそ、このケーキ全部手作りなの!?」

「三種類もあるんだけど!」

「しかも、すごく美味しいし!」




「この紅茶もムチャクチャ美味しい!」

「コーヒーも旨いよ」

「そこらのカフェとか目じゃないね」




「あ、そうだ、お見舞い!」

「わ、ごめん! 出し忘れてた~!」

「ハルちゃん、ゼリーが好きって聞いたから、フルーツゼリーの詰め合わせ。ささやかだけど」
「みんなからだよ」





「ねえねえ、あそこに飾ってある写真、もしかして結婚式の!?」

「わ~、見せて見せて!」

「ハルちゃん、可愛い~!」

「あれ? どっかで見た人がいる」

「え? 大学院生のお兄さん? キャー、紹介して~!」




 女子三人が中心となってしゃべる場はとにかくにぎやかで。

 オレは割と平気で会話に混ざるけど、河野は若干引いてて、海堂は少しばかりあきれ顔。

 ハルはと言うと、にこにこと笑顔で話を聞きながら、たまに聞かれたことに答えていた。




「そう言えば、演習の授業、先生変わるって噂あるけど、どうなんだろう」

 不意に海堂が話題を変えた。

「それホント? こんな中途な時期に」

「でも先週の火曜日から、全部の授業休んでるって」

「病気じゃない?」

「インフルエンザとか?」

 オレの方を見てニヤッと笑いながらの河野の言葉に、また笑い声があふれた。



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