初めてのお見舞い ~15年目の小さな試練 番外編(1)~
 山野先生の研究室を訪ねた翌日、お義父さんが在宅の夜、学園長と大学長、それから学部長の久保田教授がうちに来た。

 ハルは病院、お義母さんも病院で仕事中ってことで、お義父さんとオレの二人で応対。

 ハルはICUに入れられていたから、その日、オレは病院に泊まることができなかった。そうでなかったら、心配で、たとえ数時間でもハルの側を離れられなかったかも知れない。

「本当に申し訳ありませんでした!」

 地位も名誉もある大人が三人揃って頭を下げる姿は、なかなか壮観だった。

 でも、少しばかり違和感を感じた。やった本人は来ないんだ、って。

 ひたすら平謝りする三人に笑顔で応対していたお義父さんは、実は静かな怒りを内包していたようで、小気味よく嫌みを飛ばす。




「いや、杜蔵学園に預けておけば安心だと思っていたんですよ。高等部までは本当に良くして頂いてましたし」



「娘から、経営学について教えて欲しいと言われて、素直に教えた私も馬鹿でした。まさか、大学の准教授ともあろう人が、このような事をするとは」



「ああ、そうだ。先生方は聞きましたか? 准教授の話された内容。……え? ああ、教授からのまた聞きですか。それでは、正確な判断はできないでしょう。叶太くん、データをお渡ししたら? あれは、やっぱり聞いていただいた方が良いだろう」


< 7 / 14 >

この作品をシェア

pagetop