初めてのお見舞い ~15年目の小さな試練 番外編(1)~
 尽きることない他愛のない会話をどれくらい聞いた頃だろう?

 ハルが何度か小さくあくびをした。

「ハル、大丈夫?」

「……うん」

 だけど、覗き込んだハルの目はトロンとしていて、かなり眠そう。

 これはそろそろ休ませないと、とタイミングを計っていると、左肩にトンとハルの重みが加わった。見ると、ウトウトと小さな寝息を立てはじめたハル。

 ゆらゆらと身体が揺れて反対側に傾きそうになった瞬間、手を添えて、自分の方に抱き寄せた。

「あれ? ハルちゃん、寝ちゃった?」

「可愛い~」

「安心しきってるね」

 女子の言葉に続いて、

「いや、疲れたんだろ? そろそろ失礼しようか」

 と河野が言うのを受けて、当初の目的を思い出した本城が慌てて答えた。

「そっか、そうだよね。昨日まで入院してたんだよね。まだ体調悪いよね」

 今井が心配そうにハルに目を向けた。

「ごめんね、長居しちゃって」

「いや、大丈夫」

「部屋で寝かしてやったら?」

 海堂の言葉にどうしようかと一瞬迷い、頭をなでながら、ハルに声をかけた。

「ハル、部屋行こうか?」

 そう聞くと、ハルがわずかに身じろぎした。

 やっぱり、まだ何となく意識あるよな。

 と思っていると、ハルが囁くように何かを言った。

「……や……に、…る」

 イヤ、ここにいる、かな?

 どうやら、ハルはこのにぎやかな空気が心地よいらしい。
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