コイッペキ
紫恩と恵麻が他の人とは違う。
と、気づいたのはいつからだろうか。
それは、見た目だけではなかった。

美男美女として目立つだけではなくて。
紫恩と恵麻が異常なくらい記憶力が良いと気づくのは、すぐに周りの大人も気づいたと思う。
一度、見てしまったものはすぐに覚えてしまう。
一度、経験したものはすぐに出来てしまう。
2人とも幼いころから天才だったのだと思う。
何をやらせても、すぐに出来てしまう。
恵麻と陽菜は色んな習い事を一緒に経験した。
水泳、ピアノ、バレー(踊る方)、そろばん、習字・・・
陽菜は出来なくて泣きわめく一方。
恵麻は大人顔負けですぐに出来てしまう。
「陽菜ちゃんてドジだよね」
いつからだろうか。
何をやっても要領が悪く物覚えの悪い陽菜を見て。
恵麻がイライラしだしたのは・・・

すぐに出来てしまう恵麻は、すぐに習い事をやめてしまった。
「だって、面白くないんだもん」
の一言でやめてしまう。
そして、そのうち。
恵麻は、陽菜を見て馬鹿にするようになった。
「陽菜ちゃんてなんで、できないのー? そんなの、すぐできるよー」
陽菜は泣いた。
幼稚園から小学校を卒業するまで、陽菜は恵麻に馬鹿にされ続けた。
悔しい。
でも、出来ない。
そうなれば、陽菜は陰で努力するしかなかったのだ。

一方、紫恩といえば。
幼いころ、蛍に憧れていた。
蛍は小学生に入ってから空手に夢中になっていて。
紫恩も真似して空手を習うようになった。
そして、気づけば全国大会優勝。
黒帯の持ち主とまでなった・・・。

「おはよう」
教室に入って。
クラスメートに挨拶した陽菜は、自分の席に座った。
頑張っても、あの兄妹に近づけることはないんだろうなと思った。
でも、悔しいからもがくしかないのだ。
あの2人は神様にすべてを与えられたのだと思う。
容姿端麗、頭だっていい。
何でも出来て欠点がない。

ん?
陽菜は首を傾げる。
欠点がないのは、言い過ぎなのかもしれない。
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