33歳の初恋【佳作受賞】
 放課後、先方の木村先生から電話が掛かって来た。

「松井先生ですか?
川上小(かわかみしょう)の木村です」

え!? 男!?

なぜか、なんの疑いもなく女の先生だと思い込んでた私は、驚いて固まってしまった。

「もしもし? 松井先生?」

「あ、はい! すみません。松井です」

優しく落ち着いたテノールの声が、耳に心地よく響く。

「いろいろ相談したいので、直接会ってお話
したいんですが、今夜、お時間
取れますか?」

「はい、大丈夫です」

木村先生は、私でも知っている有名な洋風居酒屋を指定してきた。

木村先生…
どんな先生だろう。

声の感じは、まだ若そうな気がしたけど、学年主任らしいから、私よりは年上かな?

いっそ、10歳くらい年上なら、緊張しないのに。


私は、年配の先生は、子供の頃から接してきた先生と同様に話せるから大丈夫なんだけど、同世代の先生は、未だに緊張してしまう。

その日の放課後、私は、ドキドキしながら、待ち合わせ場所に向かった。
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