33歳の初恋【佳作受賞】
 翌週、お相手に確認したからと、また木村先生に同じ店に呼び出された。

 今回は、相手がイケメンだと分かった状態で行くので、前にも増して緊張する。

あ、そうだ!
木村先生の年なら、既婚者かもしれない‼︎
そうよ。
既婚者なら、おじさんと同じ感覚で話せるかも。

私は気を取り直して、店に向かう。


今回も店員さんに案内されて、個室に通された。

「こんばんは」

入室と同時に私から挨拶をする。

「こんばんは。
何度もお呼び立てしてすみません」

木村先生はにこやかに挨拶を返してくれる。

「いえ、大丈夫です。
木村先生こそ、大丈夫ですか?
家でご家族が待ってらっしゃるんじゃ…」

奥さんだけじゃなくて、小さなお子さんがいらっしゃるかもしれない。
お風呂とか大変だって聞くし。

「ああ… 」

木村先生は苦笑を漏らす。

「年齢的に既婚者だと思いますよね。
大丈夫です。
俺、独身の一人暮らしなんで」

「え…
あ、ごめんなさい…」

どうしよう。
失礼なこと言っちゃった。

「気にしないでください。
いつものことなんで、慣れてますから。
それより、松井先生は?
お若そうですが、
ご結婚されてるんですか?」

「い、いえ、私なんて、貰って
くださるような奇特な方、いませんから」

私は、恥ずかしくなって、俯いたまま右手を左右に振る。

お若そうって、私一体、何歳に見えてるんだろう。

私は、昔から、小柄で童顔なので、幼く見られることが多い。
この歳になって、ようやくそれも長所だと思えるようになったけれど、二十代まではコンプレックスでしかなかった。
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