きみに命を絶たせないため。
さよなら
朝。朝だった。
誰かからしたら、おめでたい朝だろうか。
私からしたら、憎くて仕方のない朝だとしても。
カーテンなんてなく、かたいかたい床に痛みながら眠り、酒の缶、瓶の散りぢりな部屋と臭いにうんざりしながら、怒声に塗れて朝日を恨む。
『飯はまだか!』
『どうして言うことが聞けない?』
空耳なのか、現実なのか、分からなくなってきた。
いつだって、罵倒されているから。
いつだって、死にかけの日々だから。
お母さんは……いまどこにいるんだろう。もう一生、会うことはないかな。
「はぁ」
もれたため息に、はっとする。
ガシャン!
すぐ真横で、ガラスの割れた音が響いた。頬が、痛む。痺れる。生温い。
シワシワな制服に身を包み、家を飛び出した。
私は今日も、死にかけだ。
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