きみに命を絶たせないため。
さよなら



朝。朝だった。

誰かからしたら、おめでたい朝だろうか。

私からしたら、憎くて仕方のない朝だとしても。



カーテンなんてなく、かたいかたい床に痛みながら眠り、酒の缶、瓶の散りぢりな部屋と臭いにうんざりしながら、怒声に塗れて朝日を恨む。



『飯はまだか!』

『どうして言うことが聞けない?』



空耳なのか、現実なのか、分からなくなってきた。

いつだって、罵倒されているから。

いつだって、死にかけの日々だから。



お母さんは……いまどこにいるんだろう。もう一生、会うことはないかな。



「はぁ」

もれたため息に、はっとする。



ガシャン!

すぐ真横で、ガラスの割れた音が響いた。頬が、痛む。痺れる。生温い。



シワシワな制服に身を包み、家を飛び出した。

私は今日も、死にかけだ。


< 1 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop