きみに命を絶たせないため。



︎︎◌



ポーン

能天気なエレベーターが、嘲笑うかのようだった。ぼーっとしていたOLさんが、自動ドアを開けた瞬間に忍び込んだマンション。

きっと、一生住めないような高級なもので、屋上への出入りができる。高級そうなのに、セキュリティはぜんぜんだなと毒づいた。



辿り着いた屋上は、おしゃれな椅子とテーブルがある、というような高級なものではなかった。ただ、風の吹き抜ける屋上という感じ。



自殺者が出たことはないのだろうかと思ったが、家賃を払えるだけ優雅なのだから、生きたいと思うのが必然なのだろう。




小さく舌打ちをした。


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