きみに命を絶たせないため。
ギイ
重い扉を閉めると、誰が吐いたのか。鈍い悲鳴が。
その時、ひとがいたということに気がついた。
こちらを見た彼は、怒っているようだった。それが怖く見えない。狂っていたのか。私はとうに、狂って……。
「誰?」
低い、不機嫌の塊に揺すられる。
「野、新花(ひばりの にいか)」
「ふーん」
私の名前なんか。知ったところで、どうという関係にもならないだろうに。
「セン。よろしく」
……セン。
「千羽鶴の、千」
……千。
「そっちは」
すぐに漢字の話だと、気がつく。
「野原の野と、新しい花」
互い、ぶっきらぼうに。ぴったりだった。
「なんで、ここに来たの」
相変わらず低い声なのに、どうしてか氷が溶ける。
「……」
言えない。どうしても、言うことなんて。