きみに命を絶たせないため。
︎︎◌
「おいで」
連れられて、部屋に足を踏み入れる。
何かを隠すかのように、彼がテーブルに布を被せた。追求はせず、そのテーブルの横を通り過ぎ……示されたベッドに腰かける。
「どうぞ」
渡された麦茶を飲む。少し冷えたそれが、沁みた。
「東に来るで……なんて読むの?」
うなずきが、妙に静かで。
「トウライ」
トウライ、セン。表札で見た東来の文字と重ね、頭の中で繰り返す。
「ねぇ」
震える空気。風のないこの感じに、目を細めた。
「どうして、死のうとするの」
睨み合うような時間が広まる。
「言えないなら、いいんだけど」
ゆっくりと目を伏せた彼が、再び瞳を開く。
そして、戸棚を指さした。
導かれ、おずおずと取っ手を握る。