きみに命を絶たせないため。





ビクリとした。



「……これ」

「本気で死にたいなら、どれかをどうぞ」

抑揚のなさが、響いた。



首吊りの用の縄。カッターナイフ。大量の睡眠薬。剃刀。包丁。

とにかく、私が思いつく限りの自殺できる道具と、よく分からないもので溢れ返っていた。



ペタペタと足を鳴らし、彼がこちらへ歩み寄る。

座り込んだ私に、大きな影がかぶさる。



「これとかどうかね」

手近な包丁を手に取り、私に尋ねる。口元の笑みが、恐かった。



囚われの気分だった。必然のように、その上から握る。冷たい手に、重ねて。

手首に、ヒヤリとした感覚が伝う。あとは、簡単だ。

「……っ、」

大きく息を吸い込んだ瞬間、酸素を、命綱を求めていると気がつき、力が抜けた。


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