一騎当千〜二人の剣士〜

「千夏！ゼリー買って来たぞ〜！！」

その時、病室のドアが開いてお父さんが入って来る。病院内にある売店で買ったものらしい。

「あれ？千秋、来てたのか？」

「うん。部活、終わったから」

「お前も食うか？」

お父さんはそう言い、袋の中からゼリーを何種類も取り出す。どんだけ買ったんだよ……。

「じゃあ一つだけ……」

僕はぶどうを、千夏はみかんのゼリーを食べる。冷たいゼリーを飲み込むと、とても心地よかった。それにおいしい。僕はあっという間にゼリーを食べてしまう。

「千夏、おいしいか？」

お父さんが優しく千夏に話しかける。千夏はコクリと頷き、笑った。

「みかん、とってもおいしい！」

「そうか！じゃあ、また買って来よう」

お父さんは千夏とよく剣道の話をしていた。しかし、病室で剣道の話をしているのをもうみていない。きっと気を使っているんだ。もう千夏は竹刀を持ち、防具をつけ、戦えないから……。