一騎当千〜二人の剣士〜
千夏に特訓してもらってから、少しずつ僕は剣道の腕を上げられていると思う。

弱くたって立ち向かう。力は少しずつつけているのだから。

千夏との練習は、部活の同じように素振りから始まる。素振りが終わった後は防具をつけ、面や胴などを打っていく。

「いい調子だ！」

僕が面を打つと、面の中で千夏が笑う。その笑顔に僕は違和感を覚えた。

「千夏？」

何かが変だ。僕は足を止める。千夏は不思議そうな顔を見せた。

「千秋？」

僕は竹刀を置き、小手を外す。千夏はますます不思議そうな顔をした。

「まだ特訓は途中だよ？」

「今日はもうやめよう。なんか、千夏の顔色悪いよ」

ええ〜、と言う千夏の面を外し、僕はいつもよりずっと早く特訓をやめる。

やめてよかったのかもしれない。僕一人では対処できないことが、起きたのだから。



ここ最近、千夏はどこか体調が悪そうだ。でも千夏は気付かないフリをして剣道を続けている。きっと、強がっているんだ。

今日は男子剣道部と女子剣道部の合同稽古の日。武道場に男女が集まっている。
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