【女の事件】女王蜂~魔女になってしまった花嫁さん
第10話
10月3日の夕方6時過ぎのことであった。

場所は、やすあきの実家の居間にて…

9月30日にヤクザたちに殺されたやすあきの通夜が行われていたが、来ていたのは一部の人だけであった。

重苦しい雰囲気がただよっている中で、きみこ(やすあきの姉)の長男が恐ろしい目付きでやすあきの祭壇に立っていた。

きみこの長男は、祭壇に灯っているろうそくに水をかけてけした後、祭壇をめちゃくちゃに壊していた。

(ガシャーン!!)

やすあきの両親は、きみこの長男に殴られてばかりいたので、どうすることもできなかった。

そんな時であったが、Tシャツをまくり上げてへそだしにして、ボブソンのジーンズを姿で赤茶色のバッグを持っているしほこがやすあきの家の前にやって来た。

「オラオドレ!!キューデン!!キューデンが何で来たのだ!!ぶっ殺してやる!!」

やすあきと同期でキューデン本社に入社をした総務の部長の男性が弔問に来ていたが、思いきりキレていたきみこの長男につきとばされた。

きみこの長男は、かたい棒で総務の部長の頭を激しく殴って大ケガを負わせたあと、呼吸停止に至るまでシツヨウに殴り付けていた。

きみこの長男は、端にいた数人のショッケンの従業員さんたちにも殴るけるの暴行を加えて大ケガを負わせた。

きみこは、長男の暴力を止めずにボウカンしていた。

やすあきの両親は、どうすることもできずにオタオタとおたついていた。

しほこは、総務の部長がきみこの長男から暴行を受けて死んでゆくさまを冷めた目つきで見つめていた。

哀れね…

アタシにセクハラをするだけセクハラをしたのだから、地獄へ墜ちたのでしょ…

いいきみだわ…

しほこは、総務の部長がきみこの長男に殺されたのを見届けたあと、赤茶色のバッグを持ってその場から立ち去った。

10月5日に、しほこの実家で新たな問題が発生した。

しほこの妹で、中学を卒業した後に家出をしていたみかこ(16歳)が18歳のカレ(塗装工)を連れて実家にふらりと戻って来た。

しほこの妹は、胎内にカレの赤ちゃんを宿していた。

妊娠6ヶ月であった。

しほこの妹のカレは、しほこの妹と結婚したいとしほこの父親に伝えていたので、しほこの父親は気持ちがひどく動揺していた。

しほこの父親は、沼隈さんに電話をして『みかこのカレが寝ぼけたことを言よるけん、殴ってほしい!!』と口走っていた。

沼隈さんは、しほこの父親からの電話を聞いてしほこの実家へやって来た。

沼隈さんは、しほこの妹のカレに『寝ぼけたことを言うな!!目を覚ませ!!』と怒鳴りつけたあと、激しい力でカレシを殴ってしまった。

その後どうなったかと言うと、しほこの妹は両親と沼隈さんに対して『カレに暴力をふるうのだったら、この家を出てゆくから…』とタンカ切って、カレシと一緒に再び家出をした。

カレは、出てゆく前に沼隈さんのこめかみをグーで殴って大ケガを負わせた。

しほこの父親は、しくしくと泣きながら『花嫁衣装を着たしほこをもう一度みたい…』と言うていた。

しほこの母親は『しほこは、生まれた時から縁がなかったのよ…』とあつかましい声で言うて、しほこの結婚をあきらめるように言うた。

しほこが前厄の時にお見合いをしたのがいかんかったのよ…

しほこは、生まれた時から良縁に恵まれていなかったのよ…

こんなことになるのだったら…

結婚なんぞせん方がよかったのよ…

その前に、ショッケンに就職させるのじゃなかったわ…

失敗してしまった…

アタシたち夫婦が結婚したことも…

よくなかったみたいだわ…

しほこ自身も、結婚したいと言う気持ちはとうにうせていた。

新しい恋を始めても、また沼隈さんが恋人の家まで行って別れてくれとジカダンパンをするに決まってはるわ…

お見合いしても、頭がボロい相手しかおらんのよ…

それやったら、結婚なんぞせん方がトクサクよ…

しほこは、残りの人生を女王蜂として生きて行くことを決意した。

乳房(むね)の奥にできた傷の中にいるでスズメバチの家来たちが、1000億匹まで増えていた。

スズメバチの家来たちは、次のフクシュウに備えて、きわめて強い猛毒をたくわえていた。
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