贖罪のイデア
郷愁
プロローグ
古びた瀟洒な教会の前で、白い眼帯を付けたライトグリーンの髪の少年――マイケル・クリスティーは、覚悟を決めて深呼吸すると足を踏み入れた。
視界に広がるのは、十年前と何一つ変わらない厳かな礼拝堂。
立ち並ぶ古拙な木製のベンチに、祭壇へ続く赤いカーペット。
煌々と灯る無数の蝋燭の火に照らされて、その少女は佇んでいた……それは彼がずっと探し求めていた少女。
ふと違和感を抱いた。
確かにそこにいるのは探していた少女だ……だけど、果たしてそれは本当に自分が求めていた彼女だろうか?
昔の彼女はこんな、今にも消えてしまいそうなほど儚げな存在だっただろうか?
「あの、こんにちは」
マイケルがおずおずと話しかけると、少女はゆっくりと振り返る。
精緻な白い輪郭の中で、砂金の清流の様に枝垂れた金髪が流麗に揺れる。
「やっぱりイデアだよね。僕はマイケル・クリスティー。君に会いに来た」
すると、金髪越しに深海の様な深い青を湛えた双眸が彼を見つめて、感情のない声が答えた。
「貴方は……誰?」
マイケルは目を見開き、ゆっくりと右目の眼帯をなぞって……それから、とても寂しそうに笑った。
今にも泣きだしてしまいそうな笑顔で。
「ごめん――知ってたよ」
古びた瀟洒な教会の前で、白い眼帯を付けたライトグリーンの髪の少年――マイケル・クリスティーは、覚悟を決めて深呼吸すると足を踏み入れた。
視界に広がるのは、十年前と何一つ変わらない厳かな礼拝堂。
立ち並ぶ古拙な木製のベンチに、祭壇へ続く赤いカーペット。
煌々と灯る無数の蝋燭の火に照らされて、その少女は佇んでいた……それは彼がずっと探し求めていた少女。
ふと違和感を抱いた。
確かにそこにいるのは探していた少女だ……だけど、果たしてそれは本当に自分が求めていた彼女だろうか?
昔の彼女はこんな、今にも消えてしまいそうなほど儚げな存在だっただろうか?
「あの、こんにちは」
マイケルがおずおずと話しかけると、少女はゆっくりと振り返る。
精緻な白い輪郭の中で、砂金の清流の様に枝垂れた金髪が流麗に揺れる。
「やっぱりイデアだよね。僕はマイケル・クリスティー。君に会いに来た」
すると、金髪越しに深海の様な深い青を湛えた双眸が彼を見つめて、感情のない声が答えた。
「貴方は……誰?」
マイケルは目を見開き、ゆっくりと右目の眼帯をなぞって……それから、とても寂しそうに笑った。
今にも泣きだしてしまいそうな笑顔で。
「ごめん――知ってたよ」
< 1 / 39 >