贖罪のイデア
僕とイデアは昔、友達だった。

あまりに遠い記憶の向こうの話だけど、でもそれだけは確かなこと。

イデアはよくあの秘密の花園で花の髪飾りを付けて笑っていた。

僕はそんなイデアを見ているのが大好きだったんだ。

ずっと傍にいたかった。この時間がずっと永遠に続いていくと思っていた。

イデアはなぜかその秘密の花園に僕以外を入れようとしなかった。当時、それはきっと僕が彼女にとって特別な存在だからだと思っていた。

だからこそ有頂天になっていたところもあったのだと思う。イデアだけだが僕を見てくれる、僕だけがイデアを守れると、そう信じてやまなかった。



たかが六歳の子供に、何も守れるはずなどなかったのに。



焼け落ちていく教会の前で、僕は必死にイデアの名を叫んだ。

だけど彼女はどこにも見当たらなくて、大人たちに無理やり連れ出されてしまった。

最後に見たのは、教会から出て行く朧気で大柄な黒い影。

そこから先の記憶はほとんど残っていない。僕はイデアのナイトになれなかったのだから。



だから今度こそ果たすんだ――イデアが背負う過去と罪の救済を。
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