贖罪のイデア
マイケルはイデアの言葉を聞いた時、熱に浮かされた様に二の句を継いだ。

「試練というのは……君が持っている不思議な力に関することだよね?」



イデアが僕を見つめ、静かに頷く。

「ええ、きっとそうだと思う」

「もう少し詳しく状況を話してくれ。今のままでは情報が足りない」



マイケルが促すと、イデアは少し躊躇う素振りを見せてから言った。

「さっきも言った通り、昨日のあの夜狐男に会ったの。彼は今の私の姿を何て惨めなんだと嘲笑い、それからこう言ったの。『君には罰が必要だ。贖罪という名の罰が。その罰を持って、俺の復讐は果たされる』」

「贖罪って……イデアは何も悪いことなんかしてないのに」



確信に満ちた声で言うマイケルに、しかしイデアは何も答えなかった。

「あの男は贖罪が成されるには三つの『試練』を乗り越える必要があると言った。その『試練』が終わらない限りこの学校から逃がさない、と。きっとこれが、あの男の言うその『試練』何だと思う」

「ならそんな試練無視してここから出よう。狐男の言いなりになる必要はない」

「ダメ……校門にもツタがしっかり絡まってて、とても出れそうにない」

「ならどこかに隠れて助けを待とう。イデアが『贖罪』をする必要なんてないよ」

「それもきっと無理。さっき突然人がいなくなったでしょう? ここは私たちしかいない異空間なんだと思う。『試練』を超えない限り決して脱出出来ないはず」



しかし、そんなイデアの言葉を裏切る様に――突然、校舎の扉が開いた。
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