贖罪のイデア
救済の試練
目を覚ますと、イデアが隣で寝息を立てていた。
苦しそうな表情を浮かべる顔からハンカチで汗を拭ってあげる。
その時、マイケルの足に鈍痛が走った。
見ると腹や胸などの致命的な傷跡は消えかけているものの、足の傷は癒えていない。
これがさっき『ガブリエル』が言っていた全てを見なかったことに対する代償か。
「ううん……マイケル……?」
イデアが呻き、ゆっくりと起き上がる。
「イデア、まだ寝てなきゃダメだよ! 傷は完全に癒えていないんだから……!」
マイケルが忠告するも、イデアは自分の体を軽くほぐすように動いてから軽快な口調で答えた。
「ううん、私は全快しているみたいよ。どうやらマイケルより傷が浅かったおかげみたい」
「何だよそれ……今度は僕がお荷物じゃないか……」
マイケルが顔をしかめると、イデアは申し訳なさそうに言った。
「ごめんね、全てを見せてあげれば全部治せたのに……」
「いや、そんなことはいいんだよ。僕はこれ以上イデアが苦しむ姿を見たくない」
マイケルが言い切ると、イデアはおかしそうに笑った。
「ど、どうして笑うの?」
「だって、マイケルがまだ私の隣にいてくれることが嬉しくて。……てっきり、真実を知ったら私に幻滅して離れてしまうと思っていたから」
「何度も言ってるでしょ。僕は君の天使だって。守護天使が神様の側を離れるなんてあり得ない」
「私のて、天使……」
その言葉に顔を赤らめるイデアに、マイケルは気恥ずかしそうに笑う。
「イデアもそんな顔が出来る様になったんだね」
「ちょっと、どういうこと?」
「何でもないよ。それより、これからどうするか考えないと」
「むー……」
話題を流れるように逸らしたマイケルは、何とか立ち上がって辺りを見渡す。
「確認するけど狐男は試練は三つって言ったんだよね?」
「そうだよ」
「なら次で最後の試練になる。上手く自分の力を使えるようにしないと」
そう言ってマイケルは目を閉じ……一気に力を溜めて右手に燃え盛る炎剣を作り出す。
同時にマイケルの背中には立派な一翼の羽が生えていた。
「これが本当のマイケルの姿……!」
改めて圧倒されるその姿に、マイケルは慣れない動きで剣を振る。
「十年前箱庭で初めて会った時、イデアが僕に『ウリエルの鏡』を使った時もこの姿になった。つまり僕は最初からイデアの守護天使として生を受けたんだ」
「それは薄々分かっていたけど、でもそんなことってあり得る?」
「あり得る。僕の名前のマイケルの語源は『ミカエル』。ウリエル、ラファエル、ガブリエルと並ぶ神を守る四大天使の一人だ。因みに『ウリエルの鏡』を使われてもすぐ元の姿に戻ったのは、ミカエルとウリエルの力が同格だったからだと思う」
「マイケルは昔からその力を使えたの?」
「いや、気づいてはいたけど意図的に発動したのはさっき豚の怪物を倒した時が初めてだ。僕を守護天使に変える力……それがイデアの持っている三つ目の能力なんだと思う」
そして――マイケルはゆっくりとイデアに手を差し伸べた。
「さあ……おいで、イデア」
「え……マイケル?」
「これが三つ目の能力で、次が最後の試練なんだろ? だったらもうやることは分かり切ってる」
「君と二人で力を合わせて、この悪夢の世界から脱出するんだ」
苦しそうな表情を浮かべる顔からハンカチで汗を拭ってあげる。
その時、マイケルの足に鈍痛が走った。
見ると腹や胸などの致命的な傷跡は消えかけているものの、足の傷は癒えていない。
これがさっき『ガブリエル』が言っていた全てを見なかったことに対する代償か。
「ううん……マイケル……?」
イデアが呻き、ゆっくりと起き上がる。
「イデア、まだ寝てなきゃダメだよ! 傷は完全に癒えていないんだから……!」
マイケルが忠告するも、イデアは自分の体を軽くほぐすように動いてから軽快な口調で答えた。
「ううん、私は全快しているみたいよ。どうやらマイケルより傷が浅かったおかげみたい」
「何だよそれ……今度は僕がお荷物じゃないか……」
マイケルが顔をしかめると、イデアは申し訳なさそうに言った。
「ごめんね、全てを見せてあげれば全部治せたのに……」
「いや、そんなことはいいんだよ。僕はこれ以上イデアが苦しむ姿を見たくない」
マイケルが言い切ると、イデアはおかしそうに笑った。
「ど、どうして笑うの?」
「だって、マイケルがまだ私の隣にいてくれることが嬉しくて。……てっきり、真実を知ったら私に幻滅して離れてしまうと思っていたから」
「何度も言ってるでしょ。僕は君の天使だって。守護天使が神様の側を離れるなんてあり得ない」
「私のて、天使……」
その言葉に顔を赤らめるイデアに、マイケルは気恥ずかしそうに笑う。
「イデアもそんな顔が出来る様になったんだね」
「ちょっと、どういうこと?」
「何でもないよ。それより、これからどうするか考えないと」
「むー……」
話題を流れるように逸らしたマイケルは、何とか立ち上がって辺りを見渡す。
「確認するけど狐男は試練は三つって言ったんだよね?」
「そうだよ」
「なら次で最後の試練になる。上手く自分の力を使えるようにしないと」
そう言ってマイケルは目を閉じ……一気に力を溜めて右手に燃え盛る炎剣を作り出す。
同時にマイケルの背中には立派な一翼の羽が生えていた。
「これが本当のマイケルの姿……!」
改めて圧倒されるその姿に、マイケルは慣れない動きで剣を振る。
「十年前箱庭で初めて会った時、イデアが僕に『ウリエルの鏡』を使った時もこの姿になった。つまり僕は最初からイデアの守護天使として生を受けたんだ」
「それは薄々分かっていたけど、でもそんなことってあり得る?」
「あり得る。僕の名前のマイケルの語源は『ミカエル』。ウリエル、ラファエル、ガブリエルと並ぶ神を守る四大天使の一人だ。因みに『ウリエルの鏡』を使われてもすぐ元の姿に戻ったのは、ミカエルとウリエルの力が同格だったからだと思う」
「マイケルは昔からその力を使えたの?」
「いや、気づいてはいたけど意図的に発動したのはさっき豚の怪物を倒した時が初めてだ。僕を守護天使に変える力……それがイデアの持っている三つ目の能力なんだと思う」
そして――マイケルはゆっくりとイデアに手を差し伸べた。
「さあ……おいで、イデア」
「え……マイケル?」
「これが三つ目の能力で、次が最後の試練なんだろ? だったらもうやることは分かり切ってる」
「君と二人で力を合わせて、この悪夢の世界から脱出するんだ」