贖罪のイデア
イデアを背中に乗せると、マイケルは翼を開いて空へと舞い上がった。
飛んでしまえば足の傷など関係ない。今の自分とイデアを止められる者などもうどこにも存在しない。
「マイケル、見て! 私たち飛んでる! 飛んでるわ!」
まるで子供のようにはしゃぐイデアに、マイケルは微笑んだ。
「神様なのに空は飛んだことがないなんて、何だか不思議な感じだね」
「だって私には翼なんて生えてないから」
「今はもう、イデアにもちゃんと翼があるよ」
「え? どういう意味?」
背中越しに首を傾げるイデアに、マイケルは語りかける。
「イデアは前より表情が豊かになったし……何かの為に一生懸命行動出来るようになった。もう、イデアは一人で羽ばたいていけるよ」
「……何それ。マイケルが言うと全部臭いセリフに聞こえる」
「ど、どうしてだよ! 僕もたまには良いことの一つくらい言ってもいいでしょ⁉」
二人が言い合っている間にも、高度はどんどん上昇していく。
やがて校舎全体が一望できる高さになった辺りで、マイケルは校門の上空目指して真っすぐ滑空し始めた。
「もう悪夢は終わりだ。元の世界へ帰ろう」
二人には確信があった。
ここは狐男が何らかの力で作り出した幻影の世界だ。きっと、そのピースである二人さえいなくなれば学校は元通りになる。
「うん。そうだね。笑って、マイケルと二人でここを出よう――」
イデアがそう言ったのと――校門から伸びた巨大なツルが、マイケルを貫いたのはほぼ同時だった。
「……え」
イデアは肩によじ登る形に乗っていたのでツルを逃れたが……下腹に風穴を空けられたマイケルの高度はどんどん落ちていく。
「マイケル! マイケル!」
ドシャ!
マイケルはそのまま、イデアをかばう形で地面に叩きつけられた。
イデアも衝撃で地面に投げ出されるも、すぐに倒れたマイケルに駆け寄る。
「マイケル! お願い、こんな所で死んじゃ嫌だよ!」
「イデア……ごめん……君との約束……守れそうにないや……」
力を失い、翼と剣が消えて再び無力な少年となった彼の瞳から涙が零れた。
「結局僕はいつも……どんなに足掻いても……イデアを守れない……イデアを守る天使になれない……ごめんなさい……ごめんなさい……」
「マイケル! しっかりして! また『ガブリエルの箱庭』を使えばきっと――」
その時。
「おめーはまたそうやってそのガキを酷使するつもりなのか?」
「え?」
イデアが振り向いた、その先にいたのは――
茨が絡みつく校門に腰かけた、あの狐男だった。
飛んでしまえば足の傷など関係ない。今の自分とイデアを止められる者などもうどこにも存在しない。
「マイケル、見て! 私たち飛んでる! 飛んでるわ!」
まるで子供のようにはしゃぐイデアに、マイケルは微笑んだ。
「神様なのに空は飛んだことがないなんて、何だか不思議な感じだね」
「だって私には翼なんて生えてないから」
「今はもう、イデアにもちゃんと翼があるよ」
「え? どういう意味?」
背中越しに首を傾げるイデアに、マイケルは語りかける。
「イデアは前より表情が豊かになったし……何かの為に一生懸命行動出来るようになった。もう、イデアは一人で羽ばたいていけるよ」
「……何それ。マイケルが言うと全部臭いセリフに聞こえる」
「ど、どうしてだよ! 僕もたまには良いことの一つくらい言ってもいいでしょ⁉」
二人が言い合っている間にも、高度はどんどん上昇していく。
やがて校舎全体が一望できる高さになった辺りで、マイケルは校門の上空目指して真っすぐ滑空し始めた。
「もう悪夢は終わりだ。元の世界へ帰ろう」
二人には確信があった。
ここは狐男が何らかの力で作り出した幻影の世界だ。きっと、そのピースである二人さえいなくなれば学校は元通りになる。
「うん。そうだね。笑って、マイケルと二人でここを出よう――」
イデアがそう言ったのと――校門から伸びた巨大なツルが、マイケルを貫いたのはほぼ同時だった。
「……え」
イデアは肩によじ登る形に乗っていたのでツルを逃れたが……下腹に風穴を空けられたマイケルの高度はどんどん落ちていく。
「マイケル! マイケル!」
ドシャ!
マイケルはそのまま、イデアをかばう形で地面に叩きつけられた。
イデアも衝撃で地面に投げ出されるも、すぐに倒れたマイケルに駆け寄る。
「マイケル! お願い、こんな所で死んじゃ嫌だよ!」
「イデア……ごめん……君との約束……守れそうにないや……」
力を失い、翼と剣が消えて再び無力な少年となった彼の瞳から涙が零れた。
「結局僕はいつも……どんなに足掻いても……イデアを守れない……イデアを守る天使になれない……ごめんなさい……ごめんなさい……」
「マイケル! しっかりして! また『ガブリエルの箱庭』を使えばきっと――」
その時。
「おめーはまたそうやってそのガキを酷使するつもりなのか?」
「え?」
イデアが振り向いた、その先にいたのは――
茨が絡みつく校門に腰かけた、あの狐男だった。