【短】Reduce


「なんで、私を?」


それは、ぽろりと零れた本音。
彼は顔色を変えず、にこにこと微笑みながら、


『みゃーこが好きだから』


とだけ、言った。


入社試験から面識のある彼から、ニックネームで呼ばれるのに時間は掛からなかった。
だから、当たり前のように、私も彼のことを下の名前で呼んだ。


社内では仲がいい同僚。


それを崩したのは、彼の方だ。


…なんて、罪をなするのは良くないけれど…。


彼は自分のことをあまり話さない。
だから、どうしていいか分からないことも多くて、悩んだことが多かった。


「みゃーこが好きだよ」


そう言われる度に、心の中がザワザワとさざ波を立てるのは、彼のことが好きだから…だと思っていたけれど…。

結局、それは一時的なものだと判明する。






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